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120 七人使いとお的衆 Shichinin-zukai and Omato-shu

こんにちは、答志島のいがちゃんこと五十嵐ちひろです。この週末の答志島答志地区は普段より人が多くてそわそわワクワクしていました。なぜなら、1年で最も大切な行事「神祭(じんさい)」が執り行われたからです。

 

神祭は八幡神社の例祭です。答志島には各地区に八幡神社があり、それぞれ神祭が行われます。中でも答志地区の神祭は、祭りの中で行われるお的(おまと)の奪い合いの勇壮さが特徴的で、答志島を語るうえでは欠かせない存在です。

 

昨年の様子はこちら 1日目 2日目 3日目

お的衆のシオフリ

前回の記事で紹介した桃取の神祭と同様に、メインの神事は大漁を祈願する弓引きです。これは3日間続く祭りの2日目の午後に行われ、それ以外の時間は奉納演芸が行われます。

 

この記事では今年の神事について紹介したいと思います。

 

答志地区の神祭の弓引きの時刻は、毎年違います。潮の満ち引きに合わせているからです。詳しくは昨年の記事に書いてあるので読んでみてくださいね。今年は1時前に会場につくと、もうみんな準備万端という感じでした。写真を撮る場所が見つからなくて困っていたら、近くにいたおじいさんが前に場所を作ってくれたので、どうにか写真と動画に納めることができましたよ! 

七人使い(しちにんづかい)

会場である「神事(じんじ)の舞台」に最初に入ってくるのは七人使いのシオフリです。束ねた笹の葉を使って桶にくんだ潮をまき、場を清めます。その後、弓を引く禰宜どん(ねぎどん)と共に、弓や餅、お神酒などを持った七人使いが走って来て、最後尾の別のシオフリがまた潮をまきます。

七人使いのシオフリ
七人使いのシオフリ

七人使いを務めるのは、10代20代の若者たちです。この役目は神聖なものなので、みそぎをすることになっています。祭りの2日目の夜明け前から大体2時間置きくらいに東の浜に行って、全裸の状態で海に入るんですって。2月の寒空の下全裸で海に入るなんて、考えただけでも震えてきそうですが、大役についた使命感からできてしまうんでしょうね。

七人使い
先頭は漁協の管理委員長、シオフリ、禰宜どんが続きます

お的衆(おまとしゅう)

次にお的衆のシオフリが入ってきます。この間場はずっと男たちの「ウォーウォー」という声が響いています。昨年はかなり離れた所で見ることになったので気づきませんでしたが、近くにいるとけっこう潮がかかります。臨場感抜群です。

お的衆
お的衆

お的衆もやはり7人で、この役には結婚した男性がつきます。お的衆はお的を作り、運ぶのが仕事です。作るときは、お的を乗せる板の部分を作る人や墨を作る人などそれぞれ役目があり東・中・西の世古ごとに割り振られているみたいです。

お的衆のシオフリ
お的衆のシオフリ

見ての通り裃を身に着けている七人使いと比べても、お的衆は短くたくし上げた浴衣を着ておりとても寒そうですが、お的衆を務めた人に聞いてみると、帰り道に至るまでは寒さを感じなかったとのこと。一種のトランス状態なんでしょうね。神事の最中の真剣な表情を見てみるとそれも納得です。

お的を運ぶお的衆
お的を運ぶお的衆

弓引き

答志地区の神祭では、弓と矢と的を使いますが、実際に矢を射ることはありません。弓引き役の禰宜どんが、弓を引く動作を行うと同時に、その正面の道をお的衆が通り、お的を地面に落とします。このタイミングを合わせる為に、道と舞台の間に立って合図をする人がいます。下の動画で一番最初に写る人ですね。お的衆がちょうどいい位置に来ると、この人が「撃てー!」と言うんです。タイミングは完ぺきでした。

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お的を地面に落とすと、お的衆は石垣の上に飛び乗ります。この後のお的の奪い合いに巻き込まれないように、石垣の上でそれぞれの朋輩たちが手を伸ばして引き上げます。

(※朋輩・ほうばい:寝屋子の仲間のこと。詳しくはこちらを読んでください。)

禰宜どん、七人使い、お的衆、奪い合いの場所、それぞれの位置
それぞれの位置はこんな感じ
お的の奪い合い
お的めがけて男たちが飛び込む!

お的の奪い合いが終わると、お的衆、七人使いの順番に退場して行きます。会場に見に来た人たちは皆拍手と笑顔で彼らを見送ります。子どもの頃からよく知った男の子たちが立派に大役を務めているのを見て、感動に涙する人もいます。確かにみんな、普段スナックで会うときとは違う顔をしていてカッコイイんだよなあ。

退場する禰宜どんと七人使い
退場する禰宜どんと七人使い

まるはちを描く

この後、取ったお的の一部をそれぞれが家に持ち帰り、魔除けのまるはちを描きます。まるはちは八幡神社の八で、大漁祈願や家内安全といった意味があります。家の玄関脇の壁や雨戸に描いた後に、漁船にも描きに行きます。

まるはちを描く
毎年描いているまるはちの上からなぞる。まるを先に描くのが正式らしい。
船にまるはちを描く
船にも描きます「今年はうっすいなー」という声が聞こえてきた

お的の奪い合いは男の人しか参加できないので、女の人しかいない家は、近所の人や親戚に頼んで描きに来てもらったり、墨を分けてもらったりします。また、七人使いやお的衆などの役目についている場合も、自分ではできないので人に頼んでおきます。まるはちを描く所を見せてもらおうと、おじさんたちについて行ったら、自分の船の周りの船にもまるはちを描いていました。あと、わたしの顔にも墨をつけてくれちゃった人が何人かいました。海藻のフノリと海水を使っているから、結構磯っぽい匂いがして、ぬるぬるした感触でした。見ているだけでは分からなかったことが分かってラッキー・・・?だったのか・・・?

顔に墨をつけられたいがちゃん
この後さらにおでこにもつけられた

そんなわけで無事終わった答志地区の神祭の神事。改めて写真や動画を見返してみると、多くの人たちが見に来ていたし、やっぱりすごい迫力あったなー、と感じます。始まってしまうと、終わるまではあっという間でした。また、演芸の様子も記事にしたいと思います。

 

他の地区の神祭はこちら桃取(今年) 和具前編(昨年) 和具後編(昨年)