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054 答志神祭名物、墨の奪い合い(2日目) Scramble the target!! -festival day 2nd-

こんにちは。島最大のお祭り、神祭真っ最中の答志島から五十嵐ちひろがお送りします。2日目は、祭りの本番、弓引きが行われます。この弓引きの的である「おまと」の奪い合いが、祭りの中で最も注目される場面なのです。

 

一日目の様子はこちら⇒答志島最大のお祭り1日目

三日目の様子はこちら⇒祭りの終わり(神祭3日目)

 

祭りは海の神様である八幡神社の神様に豊漁を願って弓引きをする、というもの。祭りの主役は弓引きをする禰宜どん(ねぎどん)率いる「七人使い」と、的を運んでくる「おまと衆」の二手に分かれています。この神聖な儀式を執り行うために、祭りの1日目から様々な儀礼をこなすのだそうです。それぞれに「宿(やど)」が決まっており、基本的にはそこで過ごします。宿はその家のおかあさん以外の女人の立ち入りは禁じられています。

宿の家にはしめ縄がはられ、女性は入ることができません。
宿の家にはしめ縄がはられ、女性は入ることができません。

2日目は10時に舞台が開きました。その頃、七人使いとおまと衆の身の清めが行われます。七人使いは身一つで海へ飛び込み、おまと衆は海水を汲んだ水でこりをかきます。身を清める場所は立ち入り禁止となりますし、女性はその近くの路地を歩くことすら許されません。清めを行う浜の近くに住む女性たちは、この日は祭りの間ずっと外に出かけているか、家に籠っていることになります。また、清めで使う海水を汚さない為に排水を出してはいけない、という話も聞くので、かなりの生活の制限を強いられるようです。

清めを行う東の浜。普段停めてある船は別の場所に移動しています。
清めを行う東の浜。普段停めてある船は別の場所に移動しています。

この弓引き神事は、元々は旧暦の1月17日に行われる行事でした。旧暦の1月17日というと、1年で最初の満月で大安となる日です。満月というのは大潮(1ヶ月の中で潮の満ち引きの差が最も大きい日)でもあります。この日の干潮の時刻を過ぎた頃に弓引きが行われるのです。一度潮が引ききり、再び満ちてくるときには神聖な力が働いていると信じられていたためです。答志地区は現在では旧暦からずらして祭りを行っていますが、弓引きの時刻は潮の満ち干きに合わせて行われるので、毎年少しずつ時刻がちがいます。

 

弓引きの始まるまでの間、舞台では演芸が行われます。そして、いよいよ弓引きの時刻が近づいてくると、「受け芝居」が始まります。漁業組合の青壮年部による歌舞伎、仮名手本忠臣蔵の三段目です。受け芝居は七人使いの入場までの間に催される劇で毎年この演目と決まっています。七人使いが現れると、劇の途中で幕が閉じます。

受け芝居は途中で切られますが、その後しっかりと最後まで上演されます。
受け芝居は途中で切られますが、その後しっかりと最後まで上演されます。

七人使いの入場はぜひ、動画をご覧ください。ちなみに、祭り初参戦のわたしは良い場所が取れなかったため、最前列に構えていた中学生に頼んで動画を撮ってもらいました。ありがとう!!すごく助かったぞ。

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まず最初に潮ふりという役の七人使いが、場を清めながら入ってきます。それに禰宜どんと他の七人使いが続きます。

 

七人使いが舞台に上がると、おまと衆が入ってくるのを皆が待ちます。おまと衆は的を運ぶだけでなく作る部分も担います。おまとは、木を組んだ上に泉貨紙(せんかし)という和紙をのせて、ふのりと消し炭を混ぜた墨でまるはちを描いたものです。

 

これを、おまと衆が運んできたところに、禰宜どんが弓を射り、落とされたおまとの墨を男たちが奪い合うのです。おじいさんやおばあさんは「昔は本当に弓撃ちよったんや」と話しますが、現在は弓を射る動きと、的を落とす動きのタイミングを合わせてその光景を再現しています。

禰宜どんが弓を射るところ。
禰宜どんが弓を射るところ。

墨の「奪い合い」と言っても、この祭りでは1等賞の人が全部取っていくのではなく、奪い合って手に入れることができた人は皆墨を持ち帰れます。この墨で描かれたのがどの家の壁にも見つけることのできる「まるはち」です。墨の奪い合いに参加できるのは男性のみ。おまとである墨をとった男性たちは、それぞれ自分の家や、親戚、近所の女性しか住んでいない家、そして船や納屋などに、まるはちを描きに行きます。

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動画の最後にまるはちを描く所が映っています。描き終えた後に出来栄えを眺めるところがなんかイイ。

仕事を終えた七人使い。カッコイイよね。
仕事を終えた七人使い。カッコイイよね。

その頃舞台では獅子舞が行われています。たくさんの魚、酒、餅、お金を飲み込んで行きました。

 

獅子舞について詳しく書いたブログはこちら⇒激しく舞います、おしっさん

 

その後、踊りや歌謡ショーなどの演芸があり、2日目最後の演目は町内会による「仮名手本忠臣蔵五段目」です。演芸の主賓となるおまと衆、七人使いの到着を待って、上演が始まります。

この忠臣蔵も含めて、演芸で行われる劇の演目は、決まったものを繰り返し演じている為、島の人はみんなストーリーやセリフが頭の中に入っています。なので、誰が演じるかや、どんなアレンジが加えられているのかを見て楽しんでいました。 

さて、今日は神祭最終日。舞台は午後から始まります。弓引きが終わって少しリラックスモードになりそうな3日目のレポートもお楽しみに!!

 

一日目の様子はこちら⇒答志島最大のお祭り1日目

三日目の様子はこちら⇒祭りの終わり(神祭3日目)

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コメント: 5
  • #1

    hareruzo (月曜日, 19 2月 2018 17:43)

    答志の神事の様子を丁寧に撮影・取材していただきありがとうございます。島の人たちが心を込めてこの祭りを受け継いでいる様子がよくわかりました。志摩それぞれに伝統的な行事があり、漁村の暮らしを活気づけていることがよくわかりました。ありがとうございます。

  • #2

    いがちゃん (火曜日, 20 2月 2018 09:57)

    hareruzoさん
    祭りを見たのが初めてだったので、まだ素人目の記事しか書けませんが、来年再来年ともっと濃密な内容にしていけたらいいな、と思っています。

  • #3

    濱口一利 (土曜日, 24 2月 2018 21:41)

    上手にまとめてあって説明も的確です。答志の神祭、残していきたいです。

  • #4

    いがちゃん (水曜日, 28 2月 2018 09:33)

    一利さん
    いつも色々教えてくれる人たちがいて助かっています。
    一利さんもありがとうございました。

  • #5

    なる (金曜日, 16 2月 2024 16:31)

    初めて知りました。
    ありがとうございます。