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023 海苔の“種つけ” Seedling collection works for laver cultivation

こんにちは、三重県鳥羽市の答志島(とうしじま)に移住して5ヶ月経ちました、いがちゃんです。東京への出張を兼ねて、数日埼玉の実家へ帰省していました。さて、そんなときわたしがお土産として持って行くものは決まっています。

 

答志島産味海苔。口の大きなプラスチックのケースが特徴。

 

答志島産の海苔!

 

おすすめは味海苔です。答志島でとれた海苔は、風味が強く、それに甘辛く味がついているもんだから、満足度が桁違いです。もちろん味のついていない焼き海苔も絶品です。ANAのファーストクラスの食事で提供されているという焼き海苔を初めて食べたときの感動は今でも忘れられません。大げさでなく、答志島産の海苔を一度食べたら他の海苔は食べられませんよ。その証拠に、わたしの家族は帰省の度に味海苔を要求してきますし、夏に一度旅行で訪れた友人は、帰宅後2日で5つ送って欲しいと連絡してきました。

 

さて、そんな答志島産の海苔がどうやって作られるのか、その大事な工程について少し紹介しようと思います。

 

港に構えられた臨時作業場。手前に大きな水槽、水車、背景には海。
朝6時過ぎの作業場

海苔というのは冬が旬の食べ物です。秋に新芽が生え、冬に大きく生長したものを収穫します。答志島では天然の海苔も穫れますが、今回紹介するのは、養殖海苔の「種付け」の作業です。種付けと聞くと、わたしは家畜の交配を思い浮かべるのですが、海苔の場合は受精の手助けをするのではありません。成熟したノリからこぼれる胞子を網に付着させることを「種付け」と呼びます。この網に根を張り、養殖海苔は生長するのです。

 

春から夏にかけてのうちに、海苔の培養が行われます。これは各養殖業者が自分たちで行ったり、専門の業者に頼んだり、鳥羽市の水産研究所に頼んだりします。前の冬に採取された海苔から培養された海苔の糸状体(しじょうたい)というものが、牡蠣の殻につけられた状態で、種付けの作業場にやってきます。

 

水中に吊るされる牡蠣殻。
牡蠣殻の内側の白い部分が黒くなっているのは糸状体がついているから

本来海苔は秋が深まり、水温がうんと下がる時期に、日が昇ると胞子を放出します。さて、それをどう人が手伝うのかというと、この状態を演出するために、あらかじめ26度程度に保っていた牡蠣殻の入った水槽の水温を一気に20度まで下げます。そうすると、海苔は秋が深まったと勘違いし、胞子の放出を始めるのです。

 

回転する水車から網をはずす作業
回転する水車から網をはずす作業

胞子の放出の始まった牡蠣殻は、水車の設置された水槽に浸されます。その中で放出を続けていると回転する水車にまかれた網に付着するのです。胞子はとっても小さく肉眼で見ることはできませんが、ぺとぺとしているので、網にくっつくのだそう。胞子が十分に付着したら、網を外し、いったん保管するための水槽に移します。

 

水車から外した網を別の水槽に移します
水車から外した網を別の水槽に移します

ちなみに胞子がしっかりとくっついたかどうかを確認するのには、顕微鏡を使います。いかにも海で作業しています、って感じのむくつけき男たちがカッパスタイルで顕微鏡をのぞく姿はなかなか興味をそそられます。

 

網をちょびっと切って顕微鏡で胞子がちゃんと付着したかを確認します
網をちょびっと切って顕微鏡で胞子がちゃんと付着したかを確認します

胞子の放出のピークは1時間ほどで、その後は緩やかに収束します。なので、収まる前にまたピークに達しているものと交換します。水車にかけた網が無くなれば、再び網を幾重にもかけなおします。単純な作業の繰り返しですが、胞子が十分に付着するのにはそれほど時間はかからず、次から次へと網を外し、移し替えなければなりません。かなり人手の必要となる作業です。わたしの見学させてもらった海苔屋さんでは中学生や高校生が動員されていました。

 

雑多な小屋の中に顕微鏡2台。滑稽。

 

海苔の胞子の付着した網がいったん移された水槽は、23度くらいに管理されています。というのも、元々秋の水温が下がった時期に繁殖するはずの海苔なので、あんまり温度が高いと、せっかく付着した胞子がはがれてしまうことがあるそうです。温度の管理だったり、顕微鏡をのぞくことだったり、かなり科学的な要素が強いですね。

 

なつかしい理科の実験で使っていた温度計で水槽の水温を確認します
なつかしい理科の実験で使っていた温度計で水槽の水温を確認します

これらの作業は朝6時半から昼頃にかけて行われ、また夕方くらいになると海苔の胞子の付着した網は、冷凍庫に移されます。冷凍庫では生きていられるんですね、海苔。そして海水温が十分に下がったら、海の中におろされ、自然の中にいるときのようにのびのびと育っていくというわけです。

 

その後の作業から我々の口に届くまでの過程はまた改めて勉強しに行きたいと思います。

元々は海苔が自然の海の中で営んでいたことを、人の手を入れることで効率よくたくさん繁殖し成長させるのが、海苔養殖。改めてどういう理屈でどんな作業をしているのか知ると、自然と科学の融合に感動し、さらに海苔が美味しくありがたく感じられますね。今朝も半熟目玉焼きから出てきた黄身に答志島産しらすとご飯を投入し、答志島産焼き海苔でくるんで食べたら天上の果実の味がしました。おいしいおいしい答志の海苔、ぜひおためしください。

 

謝辞

本記事を作成するにあたって、鳥羽市水産研究所の岩尾氏に多大なご協力をいただきました。博士、ありがとうございます。

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コメント: 4
  • #1

    浜口一利 (火曜日, 03 10月 2017 20:44)

    良〜く勉強しましたね、2・3日で。目付けの濃淡で今漁期の漁が決まってしまうと言っても、過言ではない。真剣です。

  • #2

    いがちゃん (火曜日, 03 10月 2017 22:39)

    先生がよかったので、ここまでなんとか持ってこられました。実際にいただいた情報を10倍くらいに薄めていますけども。
    これだけきちんと管理していても差が出てくるみたいで、養殖は一筋縄ではいかないですね。

  • #3

    ナガシマ (水曜日, 04 10月 2017 10:08)

    初めまして、ナガシマと申します。
    先日名古屋から答志島の、寿々波さんという旅館に泊まりに行きました。
    たまたま、フェリー乗り場でこのブログのことを発見してお邪魔させていただきました(^◇^)
    協力隊の活動頑張ってください(^◇^)

  • #4

    いがちゃん (木曜日, 05 10月 2017 00:27)

    ナガシマさん
    答志島へのご旅行は楽しんでいただけたでしょうか。
    よければまたのぞきに来てくださいね。