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049 地域おこし協力隊全国サミットに行って来ました Local Vitalization Cooperator Summit

こんばんは、鳥羽市地域おこし協力隊の五十嵐ちひろです。前回の更新から少しあきました。というのも、1週間ほど出張を兼ねて埼玉に帰省していたのです。

 

さて、今回の出張というのは「地域おこし協力隊全国サミット」です。今や地域おこし協力隊は全国4千人以上となり、受け入れ自治体も900に届くとか届かないとか。地域おこし協力隊の制度については以前書いたこちらの記事を読んでみてくださいね。

メイン会場

全国サミットということで、全国の北は北海道から南は沖縄、山海農村さまざまな地域で活動する隊員たちが東京・虎の門ヒルズに集まりました。

内容としては、簡単な開会式の後に基調講演を聞き、ワークショップを受けたり、パネルディスカッションを聞いたり、人によってはブースを出して活動報告や活動で関わるものの販売などを行ったり、という感じです。

 

基調講演ではStudio-L代表取締役の山崎亮さんのお話を聞きました。山崎さんはコミュニティデザインで地域づくりに関わる仕事をされています。いままでに関わった多くの仕事の中からいくつかを紹介してくださいました。

 

さて、ここで少し話はそれます。わたしはありがたいことに着任して以来多くの研修会や交流会の類に出してもらっていて、地域づくりに関する勉強をする機会を何度も与えてもらっていたのですが、今までそのレポートをしたことはありません。なかなかまとめるのが難しいし、正直読んでいる人も面白くないかな、と思って。

 

しかし、この山崎さんがラーニングピラミッド(画像参照)の話をしてくださいまして、要は講演を聞くだけだったら1週間後にはその知識の5%しか残っていないけど、他の人に教えればそれが90%まであがるよ、ということだったので、それなら人が面白かろうとそうでなかろうと伝えることで自分の知識にしようと思い立ったわけです。

ラーニングピラミッドは学習方法が能動的なほど学習内容が定着することを表すものです。
ラーニングピラミッドは学習方法が能動的なほど学習内容が定着することを表すものです。

では山崎さんの話に戻りましょう。エイジフレンドリーシティ(高齢化を防ぐのではなく、高齢の人でも生きやすい社会を目指す)を打ち出している秋田市の例。ここでは幸福に生きる高齢者の方たちを「先輩」と呼び、町の若者たちが先輩たちにその幸福な人生の秘訣を聞きだし、それをまとめ、展覧会を企画し、準備し、開催中は展示内容の案内もし、そこからさらに何かをする仲間を作る、ということを行ったのだそうです。

 

実のところ統計やデータを読み解けば、なんとなく長生きの秘訣とか、人との関わりの量が健康に影響を与えるとか、そういうことは分かるのですが、そういうことではなくひとりの個人がどのようにして、健康に楽しく生きているのか、というのを調べることに意義があるんです。山崎さんは「エビデンスより個人を見る」とおっしゃっていましたね。

 

講演では実際の展示内容や取材風景を写真で見せていただき、会場には何度も笑いが起こっていました。

イベントスペース(ブース出店)
イベントスペース(ブース出店)

次に紹介されたのは智頭町での仕事について。智頭町は先進的な地域おこしの例でしばしば名前の挙がる自治体です。ここでは元々役場の各部署がそれぞれ行っていた事業の棚卸しを行いました。いったんすべての事業を列挙し、それを対象年齢ごとに仕分けしていくというシンプルなもの。しかしこれを行うことによって、智頭町が元々行っている事業が住民のライフプランに沿ったものである、ということが一目でわかるというわけです。

 

もっと色々なことをおしえてくださったのですが、残念ながらもう既に記憶が20%くらいになっています。やはり短期記憶が残っているうちに一度振り返らないとダメですね。

 

また、福島県猪苗代町で地域住民を中心として誰もが集まれる美術館を目指して作られた「はじまりの美術館」の支援を行ったときのエピソードでは、多くの参加者が大きくうなずき、そして共感の笑いが起こりました。

 

会津の方たちはとっつきにい気質ですぐには打ち解けられないので、プロジェクトメンバーが町に移り住み「私設地域おこし協力隊」状態でスタートしたそうです。人通りの多い道沿いに住居を構え、毎日3食屋外で食事を作り、食べていれば、どんなに閉じた地域でも一番最初におばあちゃんたちが近づいてきてくれるに違いない、という作戦のもと地域に馴染んでいく過程の説明がとても面白くて印象的でした。話を聞いていたほとんどの人の頭にも、他の95%は忘れてしまってもこれだけは残っているはず。

「生野菜を貰っても安心してはいけません、おばあちゃんたちは偵察に来ているんです」
「生野菜を貰っても安心してはいけません、おばあちゃんたちは偵察に来ているんです」

そして最後に山崎さんが話してくれたことは、これから地域で活動を続けていくわたしたちを力強く勇気づけてくれるものでした。

 

モノやサービスを手に入れる方法は3つあります。1つめは「見知らぬ人」から「貨幣」を介して手に入れる方法。つまりネットでの通販を含む普通の買い物です。2つめは「顔見知り」から「信頼と貨幣」を介して手に入れる方法。例えば大家さんに家賃を払いに行ったら柿をもらった、とか美容室に行ったらお土産を貰ったなどです。そして3つめが「知り合い」から「信頼」を介して手に入れる方法。つまり、単純にモノを貰うこと。信頼関係があってこそのやりとりです。

 

都市部での暮らしでは圧倒的に1つめの割合が大きいため、将来に不安を感じたときに人が考えるのは「いかにお金を増やすか」「老後のためにお金を残しておく」などです。一方田舎暮らしでは1つめと2つめと3つめのバランスがかなり取れている状態になります。その為人々はモノやサービスを手に入れるために人との関わりを大切にするのです。

 

追記(2018.9.28)この公演で話されていたのと同様の内容を含む記事を見つけたのでリンクを貼っておきます。「信頼による観光」と私たちの働き方(JTB総合研究所)

 

これからの時代に豊かで安定した人生を送るために必要なものってなんなんでしょうか、もしかしたら人との信頼の比重が全体的に増えてくるかも知れません。そんな話を聞いて、「ああ、わたしの選んだ人生って間違っていないぞ」と思ったのはわたしだけではないはずです。

 

と、こんな感じで山崎さんのお話は終わりました。多分わたしが覚えているのは45%くらいで、ここにまとめたのは30%くらいかな。

 

もう既に長くなっているので、昨年夏に研修でお世話になった徳島大学准教授の田口太郎先生がコーディネーターを務められたパネルディスカッションについては割愛します。ザックーっとまとめると、地域づくりは小さな失敗があった方が良く、試行錯誤や回り道、そしてどんどんしゃべることがが強固なコミュニティを作りに必要だ、といったところでしょうか。

パネルディスカッションの様子

サミット終了後には交流会があり、多くの地域おこし協力隊の方たちと知り合うことができました。この人の活動めっちゃ気になる!!っていう人も何人かいて、これから情報が届いてくるのが楽しみです。

 

下は日本で最も美しい村と言い切る兵庫県香美町小代(かみちょうおじろ)の隊員さんのインスタ。

余談ですが、交流会の後に三重県の協力隊3名と行政職員3名で二次会に行きました。これが普通なのかと思っていたのですが、県の職員さんいわく、三重は(特に行政職員同士が)特別つながりが強いみたいです。わたし自身も別の市町の隊員で頻繁に連絡とる人もいるし、プライベートで遊んだりもするし。へー、三重県って仲良しなんだー、みたいな。せっかくだから一緒になにかプロジェクトを、なんてところまで持っていけたらいいですね。

 

以上、地域おこし協力隊全国サミットの報告を終わります。